カートさんところのトラバンケートに参加。
テーマは 「この本の装丁が素敵!」
中身のよく分らない本を買うときに
装丁というのは私にとって結構大きな割合を占めているのだけど
装丁が素敵だからってだけで買うことはないので
改めて聞かれると答えに困ってしまう。
私にとってほとんどの本は消耗品で
使命を果たしたあとは順次 古本屋に流れていくわけで
そのなかで年を経た ほんの一握りだけが 保存に値するものとして
装丁も含めて評価されるようになる。
というわけで御紹介の2冊。
私にとっては 表紙を見ただけで
体のまン中に手を突っ込まれて かき回されているような
抑えがたい律動が むくむくと頭をもたげてくるのを感じる本だ。
虹の理論 中沢新一
この本に出会ったそのときのことを 今でもはっきり覚えている。
それまで被っていた埃を揺さぶり落として 世界が轟々と あたしの前にたち現れた。
そのときから世界は あたしにとって 美しいものになり得たんだ。
手垢で汚れ黄ばんでしまっているけれど
パールホワイトのカバーは少しざらついた材質で
世界の底を流れる乳のようだ。
そして 中心に描かれた虹を あたしは 川に広がる月経の血だと思ったんだ。
新々百人一首 丸谷才一
これは何よりも その装丁で買った本だ。
単純なパターンの素朴な柄には まだ言葉が神であった頃の
みずみずしい精神が宿っているように思う。
夜寝る前に声を出して読んで いつの間にか眠りについた。
この本を抱いて寝るのが いつしか習慣になった。
題名の黒字を際立たせる凛とした白地も そのうち 「虹の理論」のように黄ばむだろう。
********************************
せっかくだから装丁の美しい医学書を と思って探したが
ネットにのせて一般受けするようなものは 見当たらなかった。
「戸田細菌学」の布地の重々しさや 解剖学アトラスの表紙を飾る繊細な脳の断面とか
「心疾患の診断と手術」の群青色に金色の心臓の図の渋さとか
それぞれに好きなのだけど それはむしろその本と向き合った自分の時代への
愛着なのかもしれない。
雑誌 「The American Journal of Pathology」 は
あたしが研究をやることになった 動機の雑誌。 <邪w
研究なんてくそ食らえって思っていたあたしだけど
毎月毎月表紙を飾る写真の美しさに
「こういう写真なら撮ってみたい」 って思った。
大学院に入りたて 読んだって内容なんてちんぷんかんぷんの頃
「どうしたら こんな写真の場面を見ることができるのかしら」って
ため息をつきながら 夜中に一人 医局でページを繰った。
当時小さな臨床教室で持つにはまだ 蛍光顕微鏡は一般的ではなくて
身の回りで目にすることができたのは DAB発色の茶色い地味な写真ばかりだった。
何を研究したいのか と問われて
「茶色じゃなくて 赤や黄色や青の見えるきれいなやつがいい」って答えたのも
今となっては笑い話。
結局自分の研究は 全く違った方向に進んだけど
今でもこの雑誌の到着を心待ちにしている。
☆★☆★☆★☆★トラバンケート(とらばアンケート)テンプレ☆★☆★☆★☆☆★☆
「この本の装丁が素敵!」を記事にしてトラバしてください。
締切日は11月21日。
また締め切り後にTBしていただいても構いません。
皆様の参加を心よりお待ちしております。
企画元/2+2=5 (http://diesuk.exblog.jp)
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★