探し物はなんですか。
見つけにくいものですか。
今日の探し物は ガーゼ です。
見つけにくい…そう かなり、見つけにくい。
手術の際ガーゼをおき忘れた!なんて そんな まさか と思うでしょう?
十分ありえるんです。ヒヤリ、はめずらしくない。
血が出ていると無意識にガーゼを取ってぱっと詰めて
そのまま意識が他の場所に飛ぶと もうそれっきり。
詰められたガーゼは血液を吸って臓器と同じ赤になり 小さく小さく丸まって
腸の間、心臓の裏に 入りこみ
そうなったらもう探すのは一苦労。
腸を全部取り出したり 心臓をもう一度ひっくり返したり
そうでもしなければ 見つからない。
まるでガーゼが意思をもってかくれんぼしているかのよう。
心臓の裏に忘れるなんていうのは かわいいほうで
どこだかの病院では 心臓の中に(!)ガーゼを忘れそうになった と聞いた事がある。
それをやったら もう一度 心臓をあけなくちゃ見つからない。
だから手術室では ガーゼは 忘れるもの と踏んで注意に注意を重ねている。
見にくいところへガーゼを入れる際には、必ず声に出す
「心臓の裏へ一枚入れるからね、みんな覚えておいてね」
基本的に体の中に入れるガーゼの端は何かで留めてからだの外へ出しておく、
丸ごと全部入れない
区切れ区切れで数を数える。
「ガーゼカウントOKです」この声が聞けないと手術は次に進めない。
今日カウントが合わなくなったのは 最後の最後 傷を閉じるとき。
途中まで合っていたのだから、心臓の裏には絶対無いはず、と術者は言い張る。
すべてのごみ箱を漁り、術野の外には絶対無いという看護師たち。
大騒ぎして 探し回って
もう一度心臓の裏を見てみようか、いやいったん創は閉じて、レントゲンで撮ってみようか
(ガーゼには一枚一枚レントゲンに写るテープが縫い付けてある)
そのとき小さな声で 「ごめんなさい、僕です。」
結局 ある医師の足の下に。
まあ 体の中にさえ なければ それでいいのだし
ガーゼカウント合いません、の落ちは 大抵こんなものだ。
絶対なくさない 絶対忘れない 絶対ミスしない そんなことはあり得なく
だからこそたくさんの回り道やチェックがあって
守られている。
仕事の多くは この 必要な 無駄。
この無駄を みんなで 一生懸命やる その精神的余裕が 大事なこともある。
(無駄が多すぎてかえってミスが増えたりすることも多いんだけどね)
追記
私は お腹の中に 腸べら といって7cmx30cmの金属の板を 忘れそうになったことがある。
まさかそんな大きなものがはいりこむはずがないと、
みんなたかをくくっていて、
でも、なんか、やな感じがして「カウント大丈夫だよねえ」って声かけて
お腹を閉じ終わる寸前に気づいて、事無きを得た。
この話には尾ひれがついて、
その患者さん、手術の後、起きあがろうとしても 腰が曲がらなくて、起きあがれない
おかしいと思って、レントゲン取ったら、お腹の中に腸べら入っていたんだって、
ということになって、
こんな大きなものだって入りこんじゃうんだから
念には念を入れなさいって
今では笑い話 兼 戒めになってるけど、
本当に
何でも起こり得るのが 手術。