雪に降り込められる、というのは、こういう日のことを言うのだろう。
朝からのんのんのんのん降り続けた雪は、道路を埋め車を埋め、願わくばこのまま家を埋めてくれれば、春が来るまでぬくぬくと冬眠につけるのに、と思いつつ、しかし現実には降り込められて埋められちゃあかなわないわけで、一日中雪かきに追われる節分となった。
先週1週間、急に寒くなったせいか大動脈瘤破裂に心筋梗塞と緊急手術のオンパレードでようよう落ち着いた週末、緊急搬送がなければ休ませてもらうわと支度しての大寝坊、潮の満ち干きのように浅瀬になりつまた深く潜りつ、朝まで引きずるように続いたのはなんの夢だったか、ただ覚えているのはどこか遠くでがらがらがらがらと雪をかく音。それがくぐもった角のない音であるのは、アスファルトもトタンの屋根も、音を鋭く跳ね返す全ての硬いものが、深い雪に覆われている証拠で、寝床から起き出して障子を開けて見るまでもなく、今朝は大雪の朝なのだ。
がらがらがらがらどすん・・・随分と朝早くから始まって途切れることなく今まで続いていたのを無意識で知りつつ知らないふりをしつつ夢の中だと言い訳をしつつ、聞くともなく聞き続けていたその音が実は現実のもので、しかもそれが自分の家の前の路上のものだと気がついてはっと目覚めたのはもう朝も遅く。
申し訳ないやら恥ずかしいやら、かといって居留守を決め込むほど図太くもなく、通りに人の気配が消えた隙に脱兎のごとく飛び出して雪かきを済ませさっさと引っ込みたく、通りの物音に耳を済ませて待っているのに、がらがらどすんざぁぁざぁぁと朝から続く雪かきの音は一向に止まらず、そのうち「お母さぁん、もうお家に入ろうよぉ」と向かいの家の子が泣き出すに至っては、いても立ってもいられない、恥ずかしさより申し訳なさが勝つのは私も田舎の出なのだ。
作業用長靴、半纏、厚手の手袋、頭からは二重にすっぽり帽子をかぶる重装備はどなたも似たようなもの、・・・・おはようございます・・ご苦労様です・・降りますねえ・・今日は一日中みたいですよ・・そりゃあかなわない・・ほんとうに。
一人だったら適当に終わらせるところを、ご近所様の手前途中で引っ込むわけにもいかず、互いにそんな気持ちなのか、おしゃべりしいしい気がつけば氷まで削られて端から端まで片付けられた道路。とはいえ、そのむき出しになったアスファルトに後から後から積もる積もる・・・見る間に白い衣は厚みを増して綿毛から絹に絹からベルベットにベルベットからモヘアに。きりがないのだ。
できれば次に出るときにはお隣さんのいない隙にとは思うのだけど、しばらくたってお隣ががりがりがりがりやりだせば、結局いてもたってもいられず出て行かざるを得ない。おそらくお向かいさんもお隣さんも同じ気持ちなのだろう、ご苦労様です・・・降りますねぇ・・今日は一日中みたいですねぇ・・が繰り返される。
雪に降り込められた家の中、ちんちんと炎を立てるストーブのそばで、路上の音に聞き耳をたてる・・・雪をかくがりがりという音、どこかでどさんと雪を積む音、互いに挨拶をかわすくぐもった声、きゅっきゅっきゅっきゅと雪を踏みしめて歩く音、いつになく外の物音がよく聞こえる一日だったのは、しんしんと降り積もる雪が生み出す静けさのためだけではあるまい。

雪かきの一方で、今回の休日のプロジェクトはチョコチップクッキー。

実はこれ3回目のtry。
もう少し上手になったら、あの泣いていた向かいの子供に持っていってやろう。

そうそう、遅めの朝食はフレンチトースト