その店はavan通りの3丁目 黒いビルの地下にある
洪水のようなネオンの波のまにまに漂う孤独
華奢なパンプスに包んだ折れるような足は いくら気取って歩いたところで
アスファルトに触れるたびぐらぐらと傾いて
中に押し込まれた小指は赤く擦り剥けているのだ
慣れた風を装って降りる階段
だが重厚な木の扉は女一人で開けるにはいささか重過ぎる
両手で押さなければあなたの店に入ることができなかったことを
マスター貴方は知っていたのか?
優しいドア鈴の音 穏やかな微笑み
薄暗い店内をぽとぽとと照らす橙色のライト
どこか遠くから香りのように辺りを満たすリー・モーガンのトランペット
景気付けのように流しこむ一杯目はいつもニコラシカだった
一杯だけのつもりで入って まっすぐ歩いて店を出れたためしはなかった
酔いどれのかすんだ瞳に バックバーに並ぶ琥珀色の液体は誰かの見果てぬ夢のようであった
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私の田舎は青森でしてね りんごを作っておりました
無口なマスターがぽつりと語ったことがあった
街はこんなにもたくさんの人で溢れているけれど
生粋のこの街っ子は多くはないのですよ
そうですか
実は私もこの街のものではないのです
私の故郷は・・・・
私はそこで首をふる
故郷がどこであったか、なぜか思い出せない
首をもう一度ゆっくりとふると
霞んでいる橙色の照明が大きく歪んで揺れた
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世界に勝負を懸けるつもりでいるのだ これでも
明日からは違う私が 今日までの私を懐かしく思い出すだろう
明日にはこの掃き溜めのような今日から這い出るのだから
今日はさよならの日 今日までの私にさよならの日
さよならの杯を重ね重ねて あの街で
朽ちていた私よ
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前回のすごろくの目は8でした。
お題は【08.おすすめのお店紹介】。
酔っ払って一人で泣くことのできるお店を持つことは、生きていくのに必要不可欠であるように思います。