あのさあ、きっとあぶにとってはすごぉく当たり前のことなんだろうけどさ。
何?
言っていい?
うん。
さっきから、バックミラーを覗くと、雪山が追っかけてくるんだよねぇ。
この春、ブログで知り合った友人が私を訪ねてきてくれました。
長かった冬が去って、てんてん、てんてんと、あちこちの雪洞に火が灯るように開き始めた薄緑色の群生が、あれよあれよという間に火が立つように広まって、うわぁっと湧き立つような艶々しい濃緑に里が埋もれる、そんな5月のことでした。
その直前まで職場に軟禁されていた私は、まるで昼間に目覚めてしまったドラキュラみたい、まぶしくてまぶしくて、だから少しぶっきらぼうで、でもいつの間にか彼女の太陽みたいな明るさに引き込まれて、きゃあきゃあ二人で大騒ぎしながら、新緑の里をドライブに出かけたのでした。
オープンカーに乗って、風を切って、QUEENなんかをがんがんかけて、彼女はひっくり返って車のダッシュボードに足を乗っけていました。
笑いながら風をきる風をきる、トンネルのように迫り来る緑をかきわけ、ほんとにあの日は奇跡のように晴れていたのだった。
風が吹くとざわざわと木々がしなる。葉っぱ葉っぱはひっくり返って裏の薄緑をちらっと見せて、また澄まして表に戻るから、気まぐれな葉っぱ達がしがみついた大木は、風が吹くたびにきらきらと揺らめいていたのでした。
この季節にしか見ることのできないあの緑の背景に白銀の絶壁がそびえ立つのは、この土地に住む私達にとってあまりに見慣れた風景であります。
しかしあまりに見慣れた風景でありながら、それは記憶の底に刻まれた痕跡のようなもので、実際にその奇跡を目にし意識のスクリーンにそれとして映し出すのは実はめったにないことなのかもしれません。
彼女の言葉に促されて覗き込んだバックミラーには、なんと言ったらいいのでしょう、白い白い、いやあれは白などという色ではなかったのかもしれない、とりたてのミルクで作ったペンキを頭からぶっかけたような白々とした雪山がどっかりと居、そこだけがまるで別の世界、別の季節であるかのようでした。
走る私達の後を追って、雪山もぐんぐんぐんぐん走っていたのでした。
だから何、というのでもありません。
ただ、彼女の誕生日になにか贈り物を、と約束したような気がしてい、それでいて誕生日になにか気のきいた贈り物を選ぶことなど私らしくなく、迷っているうちにその日がこうしてやってきて、結局私は職場にまた軟禁されてい、買い物に出られない私を見透かすように彼女からおねだりを頂きました。
ブログタイトルを一日あなたに。
お誕生日おめでとう。