足の浮腫みは手術に付随する「最もつらいこと」のひとつだ。
特に私は浮腫みやすく、たった5,6時間の手術でも靴下のラインはくっきりとつくし、それが7,8時間を越えようものなら足の指まで赤ちゃんのようなまるまる太って、だるさを越して足がつるようになる。
静脈の弁機能が悪いのかと思って調べたが(これもまた私の専門分野である)少なくとも手術でなんとかなるようなメジャーな血管に異常はなさそうだし、仮に異常があったとしても治療対象となるようなものでは残念ながらなさそうだ。
足が浮腫んでだるいだけならまだしも、そこに加えて血小板機能が弱いから、静脈うっ滞するだけで毛細血管から細かな点状出血がでて下腿全体に発疹みたいに広がるから、手術が10時間を越えたりすると、足は気の毒を通り越してホラー映画のようになる。
長時間のたち仕事で足が浮腫むのは私に限らず、手術室に勤務する多くの同僚の悩みだから、何人かの看護師さんは足元に竹踏みを置いて手術の間中足踏みをしているし、休憩室にはフットマッサージが大抵の病院でおいてある。
どこの弾性ストッキングがよかったとか、毎晩のヨガが効いたとか、駅前のフットマッサージがお奨めとか、安価なところでは足の裏にシップを貼るとか、そういう話題には事欠かないし、休憩室のソファーにねっころがって足を机にのっけていても、あるいは患者さん用のフットマッサジャー(これは長期臥床の際の静脈内血栓症を予防するためである)を倉庫でこっそりつけていても、互いに見て見ぬふりをするくらいの思いやりを示しあっている。
それでも10時間くらいの手術なら足がだるいとか重いとかそんなことは手術が終わるまで気付かないくらいのものなのだが、まれに15時間とかいつ終わるとも知れぬ果てしない長期戦になっちゃったりすると、まあ大抵はそういうときはただひたすら出血を押さえるとかそういうことが多いものだから、足のだるさはかなり辛い。
巨大化する足に備えて手術室のスリッパは26とか27とかかなり大きいものを履いているのだけど、長期戦ではスリッパを履いてることそのものが辛いから、その辺に脱ぎ捨てられてどこにいったか分からなくなってしまうことが多い。
足首に食い込む靴下は足の指を使って徐々に下げられていき、最終的には土踏まずの所まで下ろしてしまう。こうすると床の冷たさが気持ちいいし、土踏まずのところで丸められた靴下がちょうど足を圧迫して竹踏みの役割も果たしてくれるのだ。
(こうなったら足に血が付くとかそんなことはどうでもよくなっている)
足をずんずんと引っ張る重力から逃れるために足は少しでも高いところに置いたほうがいい。というわけでこんなアクロバティックな体勢になることもしばしば。
外野から見ていると、術野では淡々と手術が進んでいるのにその下では、足の先で脱いだスリッパを探したり靴下をずり下げたりゴミ箱に足をのっけたり、さぞかしおかしいのでしょうねえ・・(笑)。
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私が外科に向かない20の理由 その5■□