とにかく猫は気に食わなかった。
お日様に暖められたお気に入りのトタン屋根の上で、自慢のほっそりとした前足をちょんとそろえて、広場の真ん中に立てられた掲示板の周りに群がるみんなを遠目に見ながら、とにかく猫は気に食わなかった。
「干支順番競争ですって?競争?何のために?」
一年ごとにその年最も注目されるべき代表を順繰りに決めよう、そんなお触れが出たのはつい1週間ほど前のことだった。
「もっともチャーミングでもっとも気高く、美を体現しつつ力を持ち、みんなに愛され、そして何よりも神様に愛される、そんな動物を選び一年間の代表とする」
どうせいつもの神様の気まぐれだわ、そう思いながらも、他のたくさんの動物達と同じく、猫もほんのちょっぴりわくわくせずにはいられなかった。
「そんなもったいつけなくてもいいのに。」猫は思った。
チャーミングで気高くてきれいで力があってみんなにも、そしてなによりも神様に愛されている、いくら考えたって自分以外に該当する者がいるとは思えなかった。だからわくわくするのは馬鹿らしいと思いながらも、やっぱり猫も一週間後と予告された選考結果をわくわくしながら待っていたのだ。
そして今日、お日様が広場の真上まで来たときに、待ちに待った次の掲示が示されたのだ。
もちろん猫は選ばれていた。だけど・・・選ばれたのは猫だけではなかった。
ねずみ、うし、とら、たつ・・・猫とともに13匹の動物の名前が掲げられ、さらに何より猫が気に食わなかったのは、名前に続くこんなお触れだった。
「今日の晩、この者たちの中から真の代表を決定するために、干支順番競争を行う。該当者は月が空の真上にくるとともに出発すべし。遅刻厳禁。」
参加権が与えられた12匹の動物たちが大喜びで夜に備える一方で、猫だけは独りトタン屋根の上で西の空に沈んでゆくお日様の一片を浴びて知らんふりの寝たふりを決め込んでいた。
とにかく猫は気に食わなかった。
自分のほかに12匹もの動物が選ばれたのも気に食わないし、自分の名前がそいつらと同じ列に同じ色で書かれていたのだって気に食わなかったし、この者呼ばわりも気に食わなかった。だって神様の膝の上でのんびりとくつろぐ猫の背を撫でるときの神様といったらもう、それはそれは気持ち悪いほどの猫なで声をだしていたから。
「私が走ったりするのキライなこと知ってるくせに」
猫は苛苛と考えた。気に食わないのはそれだけじゃなかった。競争とか順番とか、すべし、とか遅刻厳禁とか、とにかくすべてが気に食わなかった。
「そんな競争に出るもんですか。」
猫は思った。「そうだわ、そんな競争こっちからお断りだわ。神様の誘いを断るなんてあたしくらいよね。ああ、いい気味。それでいて来週の日曜日にはいつもどおり、彼の膝を借りてやるんだわ。何で来なかったの?なんて聞かれても澄まして無視。ざまあみろよね。」
手入れの行き届いたつやつやの背中をきっとご機嫌伺いにおどおどと撫でる神様の様子を想像しても苛苛はちっとも収まらなかった。
「あたしが出たら絶対に勝つんだけどな。屋根の上を軽々と渡れば屋根裏を行くねずみなんか目じゃないし、牛なんて体ばかり大きくて気のきいたダンスひとつ踊れやしない。トラはかわいさに欠けているし、ウサギにはするどい爪がない。辰・・こいつはちょっとやっかいだけど、お月様に一声かけて雲の間に隠れてもらえばあいつ月光がなきゃ飛べやしない。へびがいくらきれいだっていったって、あたしの尻尾の細さ長さにはかないやしないし、馬よりはあたしの方が歌が上手。ひつじの自慢の毛並みだってあたしに比べればアフロヘアみたいなものだし、猿の品のなさはお話にならない。鶏は3歩歩いたら忘れるし、イヌには孤高さが足りないわ。猪にいたっては、そんな田舎者会ったことすらないわ、あたし。」
悪態はちっとも止まらない。月が次第に高くなり、トタン屋根を白々と照らし出した。
「ねえ、お月様。そう思うでしょう?・・・絶対勝つって分かってるけど・・・でもね・・・しゃくじゃない・・・しゃくだけど・・意地張ってもしかたないかな・・・折れてもいいけど・・・でもあたしが競争・・?・・・・悔しいけど・・・・でも・・・勝ったら彼・・褒めてくれるかな・・・。」
いつの間にか猫の独り言は小さな寝息に変わって、トタン屋根には優しい月の光がしんしんと降り注いでいるばかり。
猫の不参加で干支は12匹の動物によって勝った順に順番持ち回りとなった。喜びに沸く干支たちといつものトタン屋根の上で知らんふりの寝たふりを決め込む猫を見下ろし、神様の奥様は神様に言った。
「ねえ、あなた。あんなふうにお触れを出したら、彼女は絶対参加しないなんてことお分かりにならなかったの?」
「分かっていたさ。分かっていたからわざとああいうお触れを出したんだよ。だってね、僕のかわいい猫が干支になんかなってしまってごらんよ。切手になったり石鹸の置物になったりあちこちに呼び出されたり、もういつものようにのんびりと伸びをする彼女の背中を掻けなくなってしまうじゃないか。」
神様はそれからちょっと笑って、でもうれしそうに付け足した。
「彼女が結局ちょっと参加する気になりそうになったのは計算外だったけどね。」
そんな神様に、奥様はやれやれというように肩をすくめて、お夕飯の支度に取り掛かった。
2006第1回TBでボケましょう参加中。
第1回お題
『2006年、今年は戌年です。
犬と猫、これほど大昔から馴染みのある動物なのにいくら待っても猫年はやってきません。
干支を決める時、神様が伝えた日にちを一日遅くネズミが猫に教えたため、猫は干支順番競争に間に合わなかったらしいですね。
で、それからというもの猫はネズミを追いかけるようになった・・・とか。これが一般的な説。
んが!違うのですよ、本当は。
猫が干支に入っていない本当の理由は・・・・・!!』
■□■□■□■【トラバでボケましょうテンプレ】■□■□■□■□■
【ルール】
お題の記事に対してトラックバックしてボケて下さい。
審査は1つのお題に対し30トラバつく、もしくはお題投稿から48時間後に
お題を出した人が独断で判断しチャンピオン(大賞)を決めます。
チャンピオンになった人は発表の記事にトラバして次のお題を投稿します。
1つのお題に対しては1人1トラバ(1ネタ)、
同一人物が複数のブログで1つのお題に同時参加するのは不可とします。
企画終了条件は
全10回終了後、もしくは企画者が終了宣言をした時です。
参加条件は特にないのでじゃんじゃんトラバをしてボケまくって下さい。
※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペして下さい。
企画元 毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/
■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
htmx.process($el));"
hx-trigger="click"
hx-target="#hx-like-count-post-3216965"
hx-vals='{"url":"https:\/\/absinth.exblog.jp\/3216965\/","__csrf_value":"682d64d43fe3cdd35a02d0c8646f9c6de27968aab2737143625ee842b6b6dd068dccab1fc038ae8cf2ea61734395d85794c7e9d06e2168b48c06fb4ff663dbb2"}'
role="button"
class="xbg-like-btn-icon">