満を持して準備した離乳食の始まりは、スムーズとは言えなかった。
満面の笑みでスプーンにかぶりつく赤ちゃん・・・私の想像とは裏腹に、空中を旋回して近寄ってくるスプーンを手でブロック、そこを突破されると「あ、あんなところに何かある!何かしら?食べている場合じゃないわ」といった風情で天井を見上げてスプーンを無視。さらには口を一文字に固く閉じて死んだ魚の目で下を向く。
口に入れれば飲み込むものの、ちっともおいしそうでも楽しそうでもなくって、「おいしいでしょう?はい、あ~ん」と妙なハイテンションの母親に嫌々付き合っているいるのが見え見えのぴぃな。
まあよくよく考えてみれば、どんな味かも分からぬ得体の知れない物を次々と口に突っ込まれるのは誰だって不安だし嫌だろうな、というわけで、食べる量には目をつむって、納得いくまで自分でやってもらうことにした。
同じ椀からおいしそうに食べる母親を見、椀に手を突っ込んでその手を舐めて、匙にすくってもらったそれを眉間に皺を寄せてまじまじと見、振り回し、鼻に入れ、耳に入れ、上手くいけば偶然口にも入り、口に入れば匙全部を舐めて確認し・・・・そうして3週間が過ぎた。
私の職場復帰を目前に、出来るだけ多くの食材を経験させてアレルギーの有無を確認したい焦りもあったけど、たぶん納得しないことにはてこでも動かない子なのだろうと腹をくくって付き合ってみた。
・・・そしてある日突然、その時が来た。
ぱちんとスイッチが入った音が聞こえたようだった。
突然こちらの差し出す匙を鷲づかみにして口に運び始めた。
目を輝かせて一つ一つの椀を覗き込み、首を伸ばして匙に食らいつき、時には次を催促して机を叩く始末。
今までのあの用心深さは何だったのだ?と思うほどの豹変ぶり。
「お粥さん、おいしいね」って、目を合わせて、にこにこ笑って。
ああそう、これを待っていたんだ。
お粥
裏ごし卵
ブロッコリー入り野菜スープ
【メモ】
これまでに食べた食材
・ 米
・ ジャガイモ
・ タマネギ
・ ニンジン
・ カボチャ
・ 大根
・ カブ
・ 白菜
・ ブロッコリー
・ トマト
・ ブドウ
・ ミカン
・ バナナ
・ 豆腐
・ タイ
・ 卵(黄身・白身)
・ だし(昆布・鰹節)