たぶん何度も躊躇しながら あるいはおそるおそる
でも勇気を出して病院の門をくぐった人たちに
私たち医療者が 初めにしてあげられること そしてやらなくてはいけないこと。
それは 心強さを与えること。
病気を治せないことはある。
和らげることのできない痛みもある。
死に向かって滑り落ちていくようなその生を支えきれないことだってある。
だけど
絶対にあなたを見放さないということ
あなたの苦しみを 最期まで 見届ける同志になるということ
あなたは一人ぼっちではないということ
それを伝えることは できる。
そうすることで 癒される痛みもあるのだから
外来治療の第一歩は 初めのあいさつから始まるんだ。
ようこそ。
ようこそ 私のところへ。
よくぞ来てくださいました。
もう大丈夫。
私が味方だから。
どしゃ降りの中軒下に駆け込んだ人にタオルを差し出すように
震えながら扉をあけた客人に暖かいお茶を出すように。
まずは椅子をすすめながら自己紹介をしよう。
偶然とは言え 私のところに来てくれたそのことに感謝を込めて
今はまだ 細い細いそのつながりを しっかり握って離さぬように。
話を聞くときには さえぎらないようにしよう。
話を聞くことそのものが あなたの誠意を最も雄弁に物語るのだから。
自分の苦しみについて語ることが 治癒への第一歩なのだから。
本題に入る前にまずは病院に来れたことを誉めてあげよう。
ここに来るまで どんなに不安だったか
どんなに苦しかったか
考えてごらん。
それから次に
不安でいっぱいのその人に
病気になったことで たぶん羞恥や後悔、自己嫌悪でいっぱいのその人に
自分を責めなくていいんだよ って伝えること。
大丈夫 あなたのせいじゃない。
誰もあなたを責めないから。
ここはあなたのための場所。
あなたのためにこの時間はあるし あなたのために私はいる。
そう伝えること。
言葉使い、仕草、相槌、視線、そのすべてでもって これだけを伝えること。
外来治療はここから 始まる。
私はそのためになら パターナリズムを あえて使う。
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研修を終えたばかりの若手Drに外来を手伝ってもらうことが多くなってきました。
これからの研修医はいざ知らず
少なくとも今の外科若手Drは 救急外来での経験が 外来経験のすべてに近いもの。
(もちろん 私もそうでした。
右も左も分からぬひよっ子のうちに 戦場のような救急の現場に独り 放り出されたものです)
夜間当直・救急外来ばかりこなしてきたDrの多くは
その場しのぎの医療を行うことには長けていますが
何年も続くかもしれない一般外来診療特有の 人間関係を築くことには 不得手なようです。
でもたぶん 一見さんの多い救急外来も 長期間フォローの必要な一般外来も
そのどちらも
求められていることは同じなのだと 思います。
だからこの文は
そろそろ救急外来や夜間当直に放り出される 新人Drに向けて。
外来に出られるようになってこそ 一人前のDr。
襟を正して。 背筋を伸ばして。
さあ 一番目の患者さんをお呼びしましょう。