ここは
舞台ではない
誰かの夢なのだ
汚泥の中を這いずり回っているが如きこの疲労も
牛馬の如く脅され尻を叩かれているこの肉体も
誰かの見ているつかの間の夢だと思えば どうってこたぁない
病院の裏口から這出る
幾日振りの夜風だろう
碧い闇
ひたひたと零れる月
満開の桜が地に這い蹲る私を見て嗤う・・・触れ得ぬものの微笑で
そして月は 月は私を知りもしない
この痛みよ苦しさよ
芥子の一粒のような 取るに足らない ささやかな痛みよ
なんてなんてなんて小さな 私の生
百年のち名はなく 行いもなく されこうべは荒野に嗤っているだろう
桜 桜 桜 百年のちもあなたはそうやって嗤っているだろうか
千年のち血は絶え 文字は絶え 切り株に腰下ろすは物言わぬ獣のみなるか
それとも千年のちには 風も絶え 地も絶え ただ宇宙の塵のなかに
ぷらすちっくの欠片が 何食わぬ顔で漂っているのだろうか
万年のち ただ在るのみが在るような 美しき曼荼羅が この世を覆い潰しているのだろうか
なんてちっぽけな
なんて取るに足らない
この痛み
百年たてば石ころ以下の この痛み
月は私を知りもしない
月は私を知らないということの その なんという軽やかさ
百年のち千年のち
されこうべは嗤うだろう
白く乾いた声をたてて
かさこそ かさこそ
ころころ ころころ
やがてそのひそかな声も 風に吹かれてさざれとなる
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お久しぶりです。
これを書いたのは3年前。
これを書いたのは2年前。なんだか状況はどんどん悪くなっています。
明日こそ辞めると言おう、そういうときに限って緊急手術が続いて息つく暇もなく、気がつけば辞表の日付が・・・(笑
私を含めメンバーが次々と体調を崩し、「過労死」などという机上の言葉ではない自分の死が、おぼろげながらかなり現実味をもって身に迫ったとき、「ここで死ぬのは悔しいだろうか」と自分自身の胸に問いました。
ところがどっこい、ぜんぜん悔しくないんですね(笑)。
ことにもっと手術がしたかったとか、もっと手術が上手になりたかったとか、もっと患者さんの役に立ちたかったとか、あるいはもっと出世したかったとか、仕事についての悔しさが、心の奥底まで浚ってみても全く見当たらないことに我ながら少々唖然といたしました。
なあんだ。
そっか。
今の私はそんな突き抜けた気持ちです。