新年早々の記事は、牛すじの煮込みでございます。
煮込みなんてものは鍋に食材と水を入れてストーブの上にのっけておけばいい、という認識はこの一年で完全に覆された。
「鍋の中は刻々と変わっていますので、コンロから離れることなく調理してください」とは柳原一成先生の言葉。(煮ものの極意 高橋書店)
たとえ、牛すじのように長時間の煮込みを必要とするものでも、つきっきりで差し水をしあくをすくい、火加減を調節する細やかさがなければ、口に入るものはできない、それが分かるまで、どれだけ多くの鍋を焦げ付かせ、干からびさせてきたことか。
生活もまた同じこと。家という器に生まれも育ちも違う食材を押し込んで愛という熱気だけを与え続ければ、遅かれ早かれ干からびるか焦げ付くか、あるいはどろどろに溶け合うか。いずれにせよ、各々の味がたつ、しゃんとした煮物などできようはずもない。
生活の始まりは食材のよさや相性にのみ囚われ、始まってからは鍋と火に頼りきりという認識の甘さは、私には合わない。生活は、料理と同じ、作り出していくものだと思う。
と、思う私は昨年は緊急手術に追われ、手術数は施設始まって以来の増加、私自身の執刀数も過去最高と、厚生省の思うつぼの集約ぶりだが、雑用も集約されているのだからたまらない。おかげで鍋はほったらかし、焦げ付きそうになってはあわてて差し水をする始末。
さて新年。
仕事にあっては数にまかせて慣れの手術をするのではなく、考え抜かれた洗練を目指したいもの。
生活にあってもやはり時間に任せた慣れあいのごった煮を作るのではなく、すじ肉とこんにゃくを別々に下茹でする気遣いをもって、できればそこににんにくの一搾りをたらして葱を添える特別の瞬間を作り出していきたい。
ねずみの後を追うのは猫・・・と思いきや、牛でしたね。
こちらは我が家の新しい同居人でございます。
以後お見知りおきを。
今年もよろしくお願いいたします。