他人にはひどいこと(?)をしているくせに
自分自身はすごく臆病、というのは、外科医全般に見られる特徴ですが
外科医が特に、手術を受けるのを嫌がる理由・・・それが、今日の話題です。
あまりに恐ろしい合併症であるがゆえに、患者には決して話さない 医師だけの秘密。
それがもしおきてしまったら!
そう考えると怖くて手術なんかとても受けられないのです。
それは
不穏不穏 (集中治療室(ICU)で起きた場合、別名「ICU症候群」とも呼ばれる)
あなたがあなたでなくなってしまう、恐ろしい合併症(笑)。
分類
1、被害妄想型
2、セクハラ型
3、寂しがりや型
4、危険行動型
それでは、各病型を、具体例で見てみましょう。
1、被害妄想型
大動脈弁置換術を施行したAさん(65歳)は術後2日目より、看護師が毒物を点滴に混入するのではないかと疑い始めた。
そのような目でみると、確かに看護師の行動は疑惑に満ちており、夜中寝静まったころに限って自分の様子をじっとうかがっていたり、カンファレンスと称して、自分の殺害計画をたてているようである。
Aさんはなんとかこの恐ろしい病院から脱出するべく、トイレットペーパーを病室の窓からたらし、階下の人々に助けを求めることとする。
また毒物混入を避けるため、自分に近づくすべての人間に対し、枕を投げたりつばを吐きかけるなどして、自分のベットに誰も近づけないようにした。
・・・3日間服薬含めすべての医療拒否。その間の記憶なし。
2、セクハラ型
バイパス手術を受けたBさん(70歳)は、術後4日目ごろから清拭をする看護婦の手を股間にもっていくようになる。さらに夜中に素っ裸になり、見まわりの看護婦に「お前の乳首をなめさせろ」と叫ぶようになる。
・・・術後7日目まで毎晩裸になりつづけ、8日目より突然回復。
その間の記憶なし。
3、寂しがりや型
Cさん(80歳)は夜中になると寂しくて仕方がなくなるようになる。ナースコールを一番中握り締め、5分おきに鳴らしつづける。看護婦が訪室してもたいした用事は無く、ただそこにいて欲しいだけである。
4、危険行動型
もっとも多い。他の3型と合併することも多い。点滴などの管が気になってしかたなく、看護師の目を盗んで自分で抜去する。この際、痛みは感じないことが多く、先の膨らんだ尿道カテーテルや点滴などを力任せに引き抜き血だらけになっても、本人は案外けろっとしている。
自分とは関係ない と思った
あなたなんと この不穏は 程度の差こそあれ、心臓術後患者の20-30%、腹部大動脈瘤患者では30-40%にもおこるのです。(病院によって違いがあります)
あなたも 無関係では ありません。
手術のなにが怖いって 自分が不穏になるんじゃないか それが一番怖いんです。
(もちろん私の同僚たちが一番心配しているのは、セクハラ型不穏 です)
術後不穏は
女より男に起きやすく
先生と呼ばれる職業に起きやすく
(ベスト3 は 1、医師 2、教頭先生 3、公務員)
真面目で 細かい人に多く
穏やかで自己抑制の強い人に起きやすい
と いわれています。
大抵は突然始まり、突然終了します。
昨日まで「おめえらの裸さ見せてみろー」と叫んでいた人が
朝「おはようございます。昨日はおかげさまで良く眠れました」なんてすまして挨拶したりします。
その間の記憶は無いことが多い。
たまに、「あの時はすみませんでした、私どうかしてました」という方もいます。
具合が悪いことが原因であることも多く、体調が回復するにしたがって治ることも多いが、全く関係ないこともある。
さあ ここで あなたの 不穏危険度 チェック
1、男である
2、先生と呼ばれている
3、公務員である
4、自分は真面目なほうだ
5、自分のミスはひどく落ち込む
6、他人のミスが目に付く
7、なにか不満があってもぐっとこらえることが多い
8、むっつりすけべである
9、人に気を使うほうだ
10、自分の体を触られるのは苦手
11、いつも緊張している
12、病気になったら人に迷惑をかけないか不安だ
8個以上 はい とこたえたあなた 不穏危険度 高いです。
「あなたのお父さん、夜中に裸になってますよ」っていわれて娘さんがびっくりしないように
今のうちに「おれは不穏になるぞ」宣言しておきましょう。
ちなみに私は いかにも危険行動型不穏になりそうだよねって 言われてます。
まとめ です
病気になったら 多かれ少なかれ 心も病むもの。
だから いろいろ気にしないで どーーーんと まかせて下さいな
追記)このエントリは不穏になってしまって、そのことを気になさっている方に「気にすることないよ、誰でもあり得るんだから」ということをお伝えしたくて書いた物です。分類もチェックリストも全てあぶの創作です。