第7回トラバでボケましょう!
朝の通勤電車。
トンネル内で電車が止まる。
いつまでたってもアナウンスはない。車掌も説明に来ない。
このあとの展開は !?
なんか 空しくない?
あ?
ほら このトンネル抜けたらさ 次の駅だろ?
ああ んで?
だからさ 空しくない?
だから なんで。
お前と組んで 何年になるっけ。
うーん 12 いや 13年か。
だろ。 13年さ お前のっけてさ 毎日毎日 こうやって 同じ路線さ 行ったり来たり してるわけよね。 13年だぜ。
ああ だってお前 運転手だしさ 俺 車掌だしさ そりゃ しょうがねえんじゃねえ? 運転代わるか?
いや だからさ そういうことじゃなくてさ なんていうかさ その 俺たちの やってることの意味 つうかさ。
お前さあ それって やばいよ。 意味 とかさあ 考えたらさあ それ まじ やばいって。
だろ。 でも 考え ちゃったんだよね。 意味。
意味 ね。 客を 運ぶ・・・
ああ 運んでんだよね 客をさ。 客はさ 運ばれてんだよね。 受身 だよな。 そこに 意志 とかは ないわけ?
あんだろ。 自分で列車乗るんだし。
だけどさ たとえば ほら あの窓の外見てる グレーの背広。 あいつに 意志 あんのかな。
うーん そう言われてみっと 意志 なさそうだな。
だろ。 いつもさ 次の駅に着くの すげー いやそうじゃん。 ああ 着いちゃったか みたいな。
ああ 確かに。 だけどよ お前 この時間帯はしょうがないんじゃねえの。 朝だしさ。 行き先は会社だろうしさ。
まあな。でもさ 今日も会社に着いちゃうのは 俺たちのせいじゃ ないだろ。
そりゃ そうだろ。
だけどさ なんか 俺 責められてるような 気が しちゃうんだよね。
ああ それ分かる。 俺なんかさ 気持ちよくうとうとしてるのたたき起こしてさ 到着のアナウンスだぜ。 いつも 本読んでる あのめがね女なんか 親の敵みたいな顔 するんだぜ。 つうかさ 列車に乗って 本 読むなっつうの。
だろ。やっぱさ 次の駅に向かおうとする 意志 つうかさ 動機 つうかさ それがさ 感じられないんだよね。
うん この車両 全体にな。
だろ。だいたいさ 俺たちは 同じ路線 行ったり来たりするんだからさ 前に進む動機が希薄でも しょうがないと 思うわけ。 円環運動 だからね。 問題はさ 乗客 じゃねえの。 本来ならさ 明確な目的地があってさ 一歩を踏み出すべく 列車に 乗るんだろ。 それがさ あーあ 着いちゃった みたいなさ。 腹 たつんだよね。 本妻店頭 ってやつ?
本末転倒 だろ。
そう それ。 列車を動かすのはさあ 明日へ向かわんとする乗客の強い意志である っていうのがさあ 本来のあるべき姿だと 思うんだよね。
・・・あの
19世紀にはさ 恋人に会いたい一心で 巴里からモスクワまで 電気なしで 列車が動いたっていうぜ。
・・・あの ちょっと
ああ それ 知ってる。 だよな。 目的意識とさ 責任感の問題 なんじゃねえの。
甘えてるんだよ。 朝起きればさ 文句言ってたって 朝飯食わされて 送り出されて 人ごみに乗れば 列車に押し込まれて 会社 だろ。
あのですね さっきから お聞きしてれば なんですか。 突然 止まって なんのアナウンスも無いから 見に来てみれば 二人そろって。 困るじゃないですか。
お前 なんだよ。
なんだよ って 乗客ですよ。 目的意識のない 乗客ですよ。
あ 聞いてたの。
聞いてましたよ。 さっきから 黙って聞いていれば なんですか。 言いたい放題。
そのとおりだろ。文句あるわけ。
だいたいさ この列車止めてから 今まで あんたたち 何してたの。 ずうっと。 誰も文句 言いに来ないじゃない。 俺たち 待ちくたびれちゃったよ。
そうそう あんまり 暇だからさ 人生の円環運動と 本末転倒について 哲学しちゃったのよ。 おたくら 何してたのよ。
何が あったのかと 乗客一同 冷静に 成り行きを待っていたんですよ。 事故やなんかだったら 冷静が 一番ですからね。
冷静 だってさ。
冷静 だってさ。 おたくら 内心 喜んでたんじゃないの。 会社 さぼれるかも とか 事件に巻き込まれちゃうかも とかさ。 残念だったね。 そんなんじゃなくてさ。
失礼な。 違いますよ。
じゃ なんで そんな 怒ってんのさ。
人生の 円環運動に ついて ですよ。
なにそれ まねし?
まねしも くそも ありません。 二人して なんですか。 被害者ぶって。 円環運動の中にとらわれているのは 我々だって一緒ですよ。 そりゃ お二人は 駅の間を 行ったり来たりしてますけどね。 我々だって似たようなものです。 職場と家とを 行ったり来たりしているだけですから。 目的地なんて無いんですから。
ま 言われてみればな。
そうだわな。
そうですとも。 つまり我々は どちらも同じ出口のない人生の円環運動の捕虜 といったところなのですよ。 そんな我々が 列車の成り行きに身を任せたところで 誰が責められるって いうんです? ああ 着いちゃった そう言って時の流れの無常さを恨んでみせるくらい いいじゃないですか。 それでも毎日サボりもせず 行ったり来たりを続けているんですから。
ま 一言くらい 言ったって いいわな。
まあな。
でしょう。 そりゃあ 確かにね ちょっとは 期待しましたよ。 トンネルで突然止まった列車。 何のアナウンスも無く過ぎる時間。 平坦な私の生活にちょっとした冒険が あるかもしれない なんてね。
そりゃあ 悪いこと したかな。
そうですよ。 汝はなぜ職場に向かうのか、それは列車が今日も動くからだ なんていうしがない歯車に 一度くらい 山とは言わないちょっとした丘越えがあっても いいじゃないですか。 そんなかわいい私の期待を裏切って 結果がこれです。 情けないったら ありゃしない。 二人とも人の話を聞くときは そのうんこ座りやめて下さい。 まったくもう 油断もすきもありゃしないんだから。 みんなしてよってたかって 私のアドベンチャーを 平々凡々に蹴落とそうとするんだから。
いや そういう つもりは なかったんだけどね。
そういうつもりでなくて なんなんですか。 とにかく 責任はとってくださいね。 この突然の列車停止に 私にふさわしい高揚とおちをつけて下さいね。 いや これはなにも私のためだけじゃないんです。 この列車に乗っているすべての乗客の ひいては あなたたち二人のためでもあるのですよ。 さあ どうするんです。
いや どうって・・・
列車は 動きませんよ。 我々に 列車を動かす 強い意志も 目的意識も ないんですから。 列車は 絶対に 動きませんからね。 動かすことは 許しませんからね。
じゃ どうするよ。
どうするってもなあ。 列車が動かない以上 誰も俺たちを 明日へは連れて行ってくれないわけだし つまりは 俺たちの人生も動かないわけだしなあ。
なすすべ なし ってか。
だよなあ。
ちょ ちょっと 待ってくださいよ。
また 登場したよ。 あんたは なに。
聞かせていただきましたけどね、 なすすべ なし ってなんなんですか。 列車が動かなければ 時も事も動かないんですか。 列車任せの人生が嫌だから 文句を言っているのでしょう。
じゃあ どうしろってのよ。
歩いたらどうなんです? 私たちの足で。
歩くって お嬢さん 列車降りてか?
そうですとも。 歩きましょうよ。 自分の足で。 それこそ 人生の捕虜にふさわしい新たなるイベントなんじゃないかしら。
私は 嫌ですね。 ここ トンネルですよ。 トンネルの中歩くなんて まっぴらごめんですから。 だいたいですね なんだって こんなところで 列車止めるんです。
だって しょうがないだろ。 ここで 突然 空しくなったんだから。
あなたが どこで空しくなるか なんて 知りませんよ。
内輪もめしてる場合じゃないでしょう。 とにかく ここであなたが空しくなり 列車を止めた。 そして 乗客の我々に列車を動かす意志のない以上 列車は動かない。 にもかかわらず 我々は 次のアクションを 次の波を 期待している。 そこまでは動かし難い事実なのですから。
やっぱ 歩くってもんじゃねえの。 背広さんよ。
ああ 歩こうぜ。 おう なんか わくわく してきたぜ。
まあ あなたたちが そうおっしゃるなら・・・お付き合いしないことも ありませんが。
おう そうと決まれば 出発だ。
ちょっと 待って おじちゃんたち。 トーマスは どうなるの。
今度は なんだよ。
トーマスは どうなるの。
トーマスってなんだよ ガキ。
この電車 トーマス っていうんだよ。 トーマスはどうなるの。
テレビの見すぎだよ 坊主。
ま トーマスでも なんでも いい。 トーマスが どうしたって。
トーマスを 置いていくの。 トーマスは どうなるの。
どうっていわれてもなあ。
ぼうや トーマスは もう 動かないのです。 乗客たる私たちに トーマスを動かす熱意も動機も失せてしまったのですから。 私たちは 新たなる一歩を踏み出すのです。 二本足で初めて立った 我々の祖先のように。
トーマスも連れてって。
トーマスは動かないんだ。
トンネルの中で 真っ暗で トーマス寂しいって。 トーマスも連れてって。
トーマスは連れて行けないんだ。
人類の希望のために 友を 見殺しにするってのかい。 お若いの。 たいしたもんだ。
しかたないだろ じいさん。
わしは そんな 希望は いらんね。
じゃあ どうしろっていうんだよ。
ふぁっ ふぁっ ふぁっ。 こんな老いぼれにはなんにもできん。 だが お若いの、お前さんたちのその腕は 飾り物かい?
こいつを 連れてくっていうのかい。
じょうだんじゃない。 何トンあると思ってるんだ。
力をあわせれば 山をも 動かせるはずじゃ。 それが 人間の 真の強さなのじゃ。
僕も がんばるよ。
坊主 そうじゃ 友達のためだ 辛くはないな。
うん がんばる。
まじ かよ。
まじ なんだろ。
でも なあ
俺たち なにやってんだろ。
だけどさ
だよなあ。
しゃーない 押すか。
だな。
それから 運転手と 車掌と 背広と めがねと そして 僕も 汗みどろになって 列車を押した。
他の乗客も みんな 列車から降りて 押した。
ぎぎぎぎー さびた音を出し トーマスは 少しづつ 少しづつ トンネルの中を進んだ。
次の駅に向かって。 僕らの 未来に向かって。
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あれから20年がたち 僕もまた あの背広やめがねと同じく 列車に乗って職場と家とを往復している。
相も変わらず早朝の通勤列車は うつむいた男と 小説に没頭する女と うつろなタメ息を乗せて 走っている。
でも 僕は知っている。
円環運動に過ぎないように見える僕らの日常が 実は 未来に向けて投げられた可能性なのだと。
僕たちの日常は いつだって 一歩間違えば とてつもない冒険へと走り出そうとたくらんでいる トーマス なんだ。
■ □■□■□■□■□【トラバでボケましょうテンプレ】■□■□■□■□■□
【ルール】
お題の記事に対してトラバしてボケて下さい。
審査は1つのお題に対し30トラバつく、もしくはお題投稿から48時間後に
お題を出した人が独断で判断しチャンピオン(大賞)を決めます。
(自分自身のお題の記事にトラバして発表)
チャンピオンになった人は発表の記事にトラバして次のお題を投稿します。
1つのお題に対しては1人1トラバ(1ネタ)とします。
お題が変われば何度でも参加OKです。
(企画元ブログにてチャンプランキングも開催中!)
企画終了条件は
みんなが飽きるまで、もしくは企画者が終了宣言をした時です。
参加条件は特にないのでじゃんじゃんトラバをしてボケまくって下さい。
※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペして下さい。
企画元 毎日が送りバント http://earll73.exblog.jp/
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ぼけてないじゃん っていう 突っ込みは 当然あるとして・・・でも 辛口で お願いします。
マゾabsinth ですので。