いつからこの町で暮らすようになったのか もう思い出せもしなかった。
とにかくいつからか 女はこの町で暮らしていた。
人間の皮膚を模して作られた「それ」は ウェットスーツのようにぴったりと女の皮膚を被い 背中にかすかに残る合わせ目の痕跡以外には 「それ」の下に隠された女の正体を 疑わせるものは どこにもなかった。
女が人間であるということを 疑う者は誰もいなかったし
ひっそりと 不器用に ではあるものの
女はこの町で ずいぶん長く 人間として暮らしてきたのだった。
なんのために「それ」を着せられ 人間のふりをしているのか、 「それ」の下にある自分の皮膚が本当はどんなものであったのか、 そんなことはもう 忘却の彼方にあった。
記憶を手繰ろうとすると いつもの頭痛がこめかみを襲い、女はそこで思考を閉ざす。
いつまでかは分からないが おそらく死ぬまでの気の遠くなるような時間、 人間のふりをして暮らさなければならないことは なぜか疑う余地のない事実であり、 いつから なんのために などという問いは、なんのために人は生きねばならないか という問いと同じように ある種の疲労を思い起こさせるだけであった。
皮膚でも呼吸しているってホントなのかしら
いつか聞いた 体中に蝋を塗って死んでしまったという若者の話しを思い出して 女はつぶやく。
ははは 人間が? それは両生類の 話しだろう?
いつものように一遍の光さえ遮断した濃闇のなかで男は答える。
ぬけるように白いその肌をさらすのを女が極端に嫌がるのを、男は羞恥のためであると思い 物足りなくも 好ましく思っていた。
じゃあ こんなに息苦しいのはなぜ
口に出そうとした問いを 女は飲み込む。
いっそのこと ばれてしまえばいい と思う。
ぴったりと密着しているはずの「それ」の下で、湿った緑の外膜がこすれ 至る所から血がにじんでいるような痛みに いつまで耐えていけるのか、いや、耐えられないということが 許されるのかどうかすら、女にはもう 分からなかった・・・・・
しすこさんに 撮られた写真見て すぐに書いたんですけどね。
裸を撮られたショックで 投稿するの忘れてました。
私はホントは 人間じゃないんだ みんなとは違うんだ
そう思ったことって ありませんか?