ああ 今日はくたびれた。明日できることは明日に回して、今日はもう解散。
こんなに早く終われる日は滅多にないのだから、帰れるときに帰らなきゃあ、明日から幾日帰れないって文句言ったってしらないよ。さあ、用のない子も用のある子も帰った帰った。
さっと白衣を脱ぎ捨ててトランクスいっちょになって、ジーパンをごそごそ穿きながら、嬉しそうに時計を見やる。
おとこもおんなもない、ごちゃまぜの研究室だ。
ベルトの上に腹の肉が乗っているのを見咎めてからかえば、あぶ、そういうお前もブラジャーの紐が肉を食ってるとよけいなお世話。
子供が居る者は今から帰るから寝ずに待っていろと赤ちゃん言葉で電話をかけ、嫁子供を実家にやって独りの者は誘い合って呑みにでるらしい、どこそこの焼き鳥屋ならラストに間に合うとどたばたと出て行く。
あぶ、お前はどうすると聞かれて迷った挙句、ひさびさの独りの夜を堪能することにした。
閉店間際に駆け込んだスーパーではもう肉も魚もめぼしいものは売り切れてい、第一こう疲れていてはまともに台所に立つ気になんかなれやしない。
さっと作ってさっと食って、あとはぼんやり水槽でも眺めて、気がついたらうたた寝をしているようなそういう夜もいいぢゃないかと、ひき肉だけ買って帰る。
うちの水槽の中ではブラックゴーストがごうごうと潜水艦のように泳いでいるんだ。
【8月2日 夜】
肉団子とトマトの雑炊
玉ねぎのみじん切りがお粗末なのも、下に沈んだご飯が冷凍なのも、ご勘弁。
それでも肉でだしをとったスープはちゃんと漉して、透明なとこにほんの少しの塩味と生姜で香りをつけた。
余った分は ゴマとタバスコで味付けし直して、辛いスープにしてふうふうかきこむ。
おんなじ材料でも二度おいしい。
同じ夜でも 何度でも楽しい。
お酒は泡盛。