あたしは体力がない。
小さい頃から自家中毒に喘息もちで おまけに片方の足が短かったから
小学校から体育はほとんど見学だった <サボっていたとも言うw
生理痛は毎月吐くほどひどいし 寝不足になるとすぐお腹にくる。
慢性の筋緊張性頭痛に加えて 2-3年に一度偏頭痛の発作で入院するはめになる。
加えて精神力とか忍耐力とか、そういったものが欠如しているから
体力勝負の体育会系のノリには全くついていけない。
外科は体力だとはいうけれど
実際には身体に鞭打っているうちにナントカいう体内物質が分泌されて
気持ちよくなっちゃうようなマゾっ気が好まれるというのだけのことで
そのマゾ性が、身体的苦痛に対して発揮されるか精神的苦痛に対して発揮されるかというだけの違いのような気がしないでもない。
ちなみにあたしは精神的マゾかもしれないけれど身体的苦痛には滅法弱くて
ちょっとどこかが調子悪いとすぐに
さぼりたい休みたい寝て過ごしたい誘惑に負けてしまう。
だからとにかく睡眠時間はがっちり確保している。
忙しい時には 風呂に入る手間とか 顔洗う手間とか 家に帰る手間とか
そういうの全部省略。
(食べる手間は近頃省略してない・・・趣味の関係でw)
時間の隙間があればすかさず寝る。
ICUから当直室へ移動する手間だって惜しいから ベッドサイドで寝るし
当直で呼ばれて病棟まで歩くのも省きたいから ナースステーションの椅子で寝る。
(そうしているとかえって気の毒がって起こされないもの)
車の助手席では必ず寝るし <おい
外来でも患者さんが途切れた瞬間に診察台に横になる。
義理で飲み会に出ても つまらなければ酔ったふりをしてすぐに寝る。
そうやっていなければしょっちゅうお腹を壊したり 倒れたりするなんていうのは
外科医としてというよりも社会人としての基礎体力が足りないんじゃないかと思う。
それでもあたしがこうやって日常生活を送っていられるのは、逆説的ではあるけれど、この仕事に巡り合えたからだ。
疲れたとか眠いとかだるいとか
始終そんなことを言っているような気がするけど
手術に入ればすくなくとも数時間、そういった気だるい思考を忘れていられるから
だから起きているのが辛い日は 手術に入るに限る。
むしろ手術がなくて過ごす一日はあんまり長くて 体力のない私なんか
なにもなくても夕方にはへとへとになってしまう。
仕事がなかったら死ぬまで生きるというだけのことで 体力を消耗していたのじゃないかとすら思う。
だから
手術に入っていられるなら ずっと寝なくてもいいような気がする
なんて青いことを言う研修医の気持ちもよく分かる。
あたしもそう思っていたもんね。
好きなことをしていれば限界を知ることなんかないんじゃないか、そんな風に思って
嬉しいような、でも少し怖いような、寂しいような、そんな気がしていた。
でも大丈夫。
心臓外科医になれば、自分の体力のぎりぎりの限界がちゃあんと見えるから。
いくら大好きな手術でも
ああもう これが限界。 どうしてもだめ。
っていうその場にすぐに立ち会える。
その限界をいち早く知って
それを回避するように立ち回る知恵こそが
一番大事な体力だと思う。
自分の身体の声を聞くこと。
こんな比較はおこがましいかもしれないけど
マラソンや駅伝の選手を見ていると 自分達もこうあらねばとつくづく思う。
自分を知ること。
そして自分を迎える未来を知ること。
残された体力を計算し、次を予想し、賢く出し惜しみすること。
ラグビー部出身だという屈強な研修医に
先生の体力にはほとほと降参しましたと言われて
あらそうかしら、と爽やかに微笑んでみせたけれど
純粋な体力じゃあ勝負にならないから
はじめから勝負のリングにあがらないようにしているだけなのだ。
あとは自分の身体の勢いを知ること、かなあ。
ある点を越えたらもう寝ない。
中途半端にあのぬくぬくを思い出すと身体が甘えるから
ちょっとだけロボットになって 身体の感覚をシャットダウン。
モビルスーツを着た気になってとにかくいっきにがしがしやる。
そういうのも大事。
こういうことを繰り返していると
自分の体の声を案外聞けるようになるものなのだ。
体のリズム、勢い
波に乗るみたいに 自分の体の勢いを旨く利用して
普段なら越えられない大きな壁を 乗り越えていく。
その向こうには 開けた地平線・・・・・ではなくて
永遠と続く壁の列、なんですけどね (苦笑
こんなに身体弱いのに あたしってばえらいっ^^って思っていたら
どこから見たって体力の固まりみたいな同僚がぼやいた。
「お前体力ありそうでいいよなあ。俺なんかすげー体力ないからさ、暇さえあればすぐに寝てるんだぜ。」
あぁ そっか。
いつも手術降りるとさっさと消えてしばらくすると何食わぬ顔で戻ってくるのは
煙草吸いに行ってるんじゃなくて 眠りに行ってたんだ。
みんなおんなじこと、してるんだねえ。
☆つけたし☆
さらにもうひとつポイント。
人手があるときには率先してサボること。
「普段働いてんだからたまには休ませてよねっ」って
常に言い続けられる図々しさがあれば、体力ないくらい平気なのさっ。
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私が外科に向かない20の理由 その1■□