「残念ですが お預かりした携帯電話は 修理不能です。」
とうとう携帯が壊れた。
小さな液晶 モノトーンの画面。
余計な機能のない ハードでタイトな一品。
バッテリーの買い置きをしようと思っていた矢先だった。
確かに大事に使ったとは言いがたかった。
ビニール袋に入れてプールサイドに置いたり
風呂に入るときだってタオルに包んで携帯したこともあった。
ごめんね。
もっと大事にしてあげればよかった。
知らないうちに 無理させていた。
内部で腐食がすすんでいたのに 何食わぬ顔して
毎日私を起こし 病院からの呼び出しを伝え
それなのに私ったら
ときどき落っことして ばらばらにしたり
酔っ払って バーのカウンターに忘れてきたり
ひどいことをした。
もう二度と 動かないの?
どこを押しても 画面は消えたままなの?
もう 私の言葉は 届かないの?
明日には
明日には 新しい携帯を買いに行かなくちゃいけないんだよ。
君に勝る子にはもう会えない って言いたいけど
それを言ってしまったら
ざらついた違和感が気になって たぶん明日の夜は眠れないから
私は明日 淡々と 新しい携帯を買いに行くよ。
君がいないこれからを 私は一人で生きていかなきゃいけないから。
ごめんね。
さよなら。
7年間使った携帯でした。
私の寿命はどうしてこんなにも長くて
どうしてみんな 私を置いて 次々といなくなってしまうのでしょうか。
携帯電話の寿命がどのくらいなのかは分かりませんが
あと いくつの携帯電話を買い換えていくのか と考えると
自分に残された時間がうんざりするほど長くも感じ
その一方で はっとするほど短くも感じます。