「…そう そんなにあなた 足草さんのことを想っていたのね」
「そうやねん そやけど おれっち 照れややしな 関西もんやしな そやからあんな態度になってしまったんや…ぐすぐす」
どうじょうの村山君は洟をぐすぐすすすりながら 続けた。
「風呂もな 足草さんあんの日 ものすごう 疲れてはって おれっちそれ知ってたんねんで。そやからな 一緒にな風呂入ろう思うて 待ってたんや。シンクロもな足草さんに笑ろうて欲しかっただけなんや。」
「なのに足草さんは あなたを排水溝に流してしまった…」
「そうやねん。いや 別にな、それはええねん。おれっちが悔しいのはな エロ大王の足草さんがな、どじょうにはエロを感じなかったっつうことなんや。足草さんなすごいねんで。
何見てもな、エロを感じ取れるねんで。まさに渡る世間はエロばかり なんねんで。泉ピン子や。そやのにな、風呂場でおれっちの裸見てもな、平然としてるんや。おれっちな、それが悲しゅうて悲しゅうてな、な、おれっちの裸、そんなに魅力ないんやろか。」
「…いや、そんなこと、ないと・・思う。ほら、足草さんさ、照れたのよ、きっと。だから風呂場の戸を閉めたんじゃないかしら。」
「そやろか。そやったらうれしいねんけど・・。いや もうだめや。そやったとしても、おれっちこんな姿になってしもたし。」
「…・」
言葉につまり、私は思わず村山君から目をそらした。村山君は土鍋の中で、溶き卵に半身を埋めながら、口だけをぱくぱく動かしていた。
中村君をそんな姿にしてしまったのは、他ならぬ私なのだ。
「もうええねん。おれっちどじょうやし、しょせん届かぬ恋やったんや。」
「そんなことないよ!」
思わず大きな声を出した私を、中村君が驚いて見つめた。
中村君の気持ちは悔しいほど、私自身もわかった。なぜなら…なぜなら、私も足草さんを愛してしまっていたからだ。
私だって、
ジャージ(下/二年用)になりたかった。足草さんの手が私の中に差込まれ、私をまさぐる様を、何度想像したことか。下村さんのブルマーにすら、私は嫉妬した。足草さんの臭い足に蹴られ、足草さんの臭い足にすがりつく自分を想像し、いくつもの官能の夜をひとり過ごした。
そしてあの運命の夜、美しい月がアスファルトを照らしたあの夜、足草さんのアパートに通じるあの坂道で、転がるおっぱいを追いかけてきた足草さんに、勇気を振るって声をかけたのだ。
「このおっぱいと本物と、どっちが柔らかいか、試してみる?」
初めて向き合う足草さんに、なんと声をかけたらいいのか、私には分からなかったのだ。
とっさに出た私の声はみっともないほど小さく、差し出した手は小刻みに震えていた。
なのに…なのに足草さんは、私の言葉なんて耳に入らないようだった。
私の差し出したおっぱいをひったくるように掴むと、何事かを叫びながら、夜更けの道を駆けていってしまった。
この時ほど、私は自分が人間であることを恨んだことはなかった。
すらりと伸びた自慢の手足も、誰もが振り向く黒髪も、すべてもぎ取り、私はあのおっぱいになりたかった。あのおっぱいになって、足草さんのよだれにまみれたかった。
だから、村山君の苦悩は痛いほど、私の胸を抉った。
私も村山君と同じだった。人間であるが故に、足草さんに振り向いてもらえず、ひとり官能のぬめりに身を焦がすだけなのだ。せめて
ホッチキスにでもなれたなら!
涙が一筋、柳川鍋の中に落ちた。
「もう、ええねん。おれっちどじょうやし、せいぜいごぼうがお似合いやねん。」
切なかった。ただただ、切なかった。
私は村山君を、静かに口の中に運んだ。最後に見る村山君は、黄色い卵と三つ葉をその身にまとい、じっと目を閉じていた。
ぐしゃり。
私は村山君の頭をゆっくりと噛み砕いた。村山君の体液と煮汁が、私の口の中に弾けとんだ。
「あぁ……」
村山君が喘ぐ。喉元までこみ上げる何かをじっとこらえ、私はさらに、村山君を噛みつぶした。
「あぁ……あしく・・さ・・さん」
村山君の喘ぎは、そこで途切れた。
ごめんなさい。足草さん。
私はその夜、スコップを持って、あなたのあの
暗い森に向かったの。
あなたがあの森で、夜な夜な何をしているか、私は知っている。
そしてその同じ場所に、村山君はそっと眠っているわ。
でんどういり!様で 開催中!
第6回恋文企画 参加中。
*****恋文祭り、届けこの想い*****
お題の相手ブログに向ける、恋するフィクション恋文コンテスト。
そうです、この恋文は、フィクションです!
揺さぶれ、心。 あしらえ、魂。
笑いを取るも良し。 感動を呼ぶも良し。
選考は、お題の相手に決定権を委ねましょう!
優勝者は、次回のブログ指名ができます!!
開催期間: 先着30トラバあるいは掲載から一週間。
審査員: お題ブログの製作担当者
審査方法: お題ブログの製作担当者からの、返信トラバにて決着!
※審査員からの返信依頼は、当座は企画元の悪魔こと、MenCが責任を持って行います。
あくまでも、フィクション恋文という姿勢を崩さないよう、
参加者の皆さんは気持ちをしっかりと持って、本気にならないように。
エスカレートして、ストーキングに走らないよう、超気をつけて下さい。暴走は厳禁です!!
※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペして下さい。
*******************************