学生の頃の話だ。
毎晩のように長電話をした女友達がいた。
女友達・・・そう 友達だ。
電話をかけるのは いつも僕の方だった。
彼女は といえば いつだって眠そうな声で 電話に出るくせに
見に行った映画のこと 友達の恋の行方 話し出すと止まらなくなるのは
彼女の方だった。
・・・うん それで?
受話器を持ち直し タバコに火を着ける。
始めたばかりの一人暮しの部屋は 散らかりほうず散らかっていて
灰皿変わりのコーヒーの空き缶は ちびた吸殻で溢れかえっていた。
万年床のまわりには
安焼酎をもっていきなり訪れる悪友が置いていった
なんとかいう女優の写真集だとか
どこかの自動販売機で買ったという 「はずれ」のビデオだとか
捨てるに捨てられないそんなものが 無造作に放り出されていた。
あんなに長い時間 僕達は いったい何の話しをしていたのだろう。
いずれにせよ たいした話しではなかった。
たいした話しではなかったが
電話を切った後 僕はいつも 放り出されたビデオや雑誌を こそこそと片付けた。
そういう気持ちにさせるものを 彼女は持っていた。
「なんだか 居心地いいんだよね」
彼女は 僕らのことを よくそう言っていた。
僕も笑って 相槌をうつ。
だが
僕は。
ファンヒーターの 時間延長を何度となく押しながら
ただ僕は 電話を切りたくなかった。
彼女の話しが途切れるのが怖くて 僕は相槌をうつ。
彼女が笑う。
彼女が話す。
僕が相槌をうつ。
彼女が笑う・・・・・・
そうやって いくつもの夜を過ごした。
そう それだけの ことだった。
どこだかのサボテン園に行ってきたとかで
彼女がお土産にサボテンをくれたことがあった。
淡い期待を込めて 何度もそのサボテンを見つめたが サボテンからは 何の意図も感じなかった。
ネクタイやチョコレートならともかく サボテンに特別な感情など 普通は込めはしないのだ。
ろくに世話もしなかったが サボテンは枯れもせず
かといってわざわざ話題にできるほど大きくもならず
灰皿のわきに おきざりにされていたが
何度目かの引越しの折に いつのまにか姿を消した。
卒業後一度だけ 彼女を見かけたことがあった。
黄金色の銀杏並木の下を 厚い本を胸にしっかりと抱き 彼女は
真っ直ぐに前を見つめて 早足で歩いていた。
下校を告げる小学校のチャイムが 遠くで響き
舞い落ちる葉は 秋の日をうけ 行過ぎる車にあおられ 彼女の足元をくるくると回っていた。
その風景が 美しすぎて 僕は声をかけられず 自転車を脇に 立ち尽くして見送った。
―――――あまりにもまぶしくて 僕は声を カケラレナカッタ。
美しすぎる
電話とコーヒー。 に 蛇足を。
すみません。
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そうです、この恋文は、フィクションです!
揺さぶれ、心。 あしらえ、魂。
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※審査員からの返信依頼は、当座は企画元の悪魔こと、MenCが責任を持って行います。
あくまでも、フィクション恋文という姿勢を崩さないよう、
参加者の皆さんは気持ちをしっかりと持って、本気にならないように。
エスカレートして、ストーキングに走らないよう、超気をつけて下さい。暴走は厳禁です!!
※誰でも参加出来るようにこのテンプレを記事の最後にコピペして下さい。
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